Aqua Timez 7th Album。
2016年12月14日リリース。
シングル「生きて」「最後までⅡ」「閃光」「We must」「12月のひまわり」収録。
10周年のベストアルバムを挟んで2年4か月ぶりとなるオリジナルアルバム。
「カルぺ・ディエム」以降バンド単位での作曲や外部プロデューサーの参加等が続いたが、今作は全曲作詞作曲を太志が担当。2曲を除いて編曲もバンドのみの名義に戻っている。楽曲的にはここ数作で広げてきた音楽性を自分たちの手でさらに高みへ…といった感じで、そういった意味からも今までのAqua Timezの歴史の集大成、最高傑作的な雰囲気を感じられる力作だと思う。
一方でセールス面では振るわず、初のオリコンチャートTOP10落ちとなってしまったり、歌詞における内輪ノリ的な顕著に目立ってくるという面であったり、外への求心力の低下に個人的にはやや先行きに不安を覚えた作品でもあったりした。
「アスナロウ」
本作のリードトラック。
初期のミクスチャーロックっぽさを織り込みつつも、尖ったラップ詞、エキゾチックなサウンドスケープ、ここにきて新しいAqua Timezのロック像が提示された1曲だ。
最初聞いた時はこれがリードトラック?とビックリした。
所謂ロックなAqua Timezはパブリックイメージとは異なっていて、どちらかというとアナザーサイド的な扱いだったので、
あえてこれをリードトラックに置いたというのが彼らの自信を強く感じられる。
実際、この1曲でAqua Timezに持っているであろうポップなイメージをガラリと変えられるようなカッコよさが詰まっている。
マジで良い。後期Aqua Timezでも群抜いての傑作だと思う。
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Music Videoが存在している。モノクロの映像とバンド演奏のみに焦点を置いた映像で楽曲のクールさ、カッコよさを源泉かけ流しで表現したような感じ。良い。
「最後までⅡ」
18thシングル。テレビアニメ「銀魂。」のエンディングテーマとして起用された。
以前に「最後まで」という曲がリリースされていたが、その続編的な楽曲(太志曰く後付けらしいが)。
「最後まで」は部活をやっている高校生の声を聴いて制作された応援歌だったが、それを受けて「最後までⅡ」は自分にも発破をかける実践編としての続編だそうで…。
確かに歌詞の面では「最後まで」ティーンエイジャー目線の詞の描き方だったけど、今回は(太志にとっての)等身大で力強い感じの応援歌になってる感じはする。
サウンド面でエッジの効いたギターロックになってるのも歌詞に強い雰囲気にマッチしてると思う。
そういう風に見てみると確かにこの曲は「最後まで」の続編だなぁと感じる。
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Music Videoが存在している。
なかなかダークな色合いの映像。ドラマパートは登場人物が多すぎてどういった意図なのかがぼやけて謎映像になっててよく分かんないけど、土砂降りの中で歌う太志は画になってる。
「空想楽」
47都道府県ツアー「Back to You tour 2015-2016」で先行披露されていた1曲。
ネオアコっぽい入りなんだけどサビに入るとEDM特有のドロップが展開する…という彼らの楽曲中でも随一の異色曲。
これ、先行披露のライブで実際に聞いたんだけど、Aqua TimezにEDMがどうしても結びつかなくて見ながらポカーンとしてしまった。会場も割とポカーンとなってた。
「アスナロウ TOUR」でも披露されているけど、さすがにその時の観客はドロップの時の乗り方に慣れた感じだったけど、歌パートの無い太志は手持ち無沙汰だし、やっぱりこの曲だけ居心地の悪い感じがあって…。良い曲なんだけど不遇。
「We must」
8th配信限定シングル。
47都道府県ツアー「Back to You tour 2015-2016」のテーマ的な曲としてツアーで先行披露されており、その後、配信限定シングルとしてリリースされた。ジャケ写もそれを反映されたような物になっている。
彼らには珍しくギターがヘヴィに鳴り響いていて、ちょっぴりハードロック風味(でも歌詞とメロディは彼の王道)バラード。
ミックスもややラフで、アレンジも最小限にして、太志もヴォーカルもややざらついたテイクを採用していて、ライブの生っぽさが凄く出てる曲だなと思う。
「冬空」
「because you are you」収録の「音速の風景」以来となるポエトリーリーディング。
ただこの曲は過去のポエトリーリーディングに比べても文章量が圧倒的に多い。
初期の頃だったらちょっとしたメロディをつけてラップ曲にしそうなくらいの分量。
この曲は次の「12月のひまわり」に直接繋がるような詩だ。アンサーソングとは違うけど、内容的には双子的な立ち位置なんじゃないかなと。
太志が地元の岐阜で様々な活動をし始めて、バンドの方も10周年を迎えて、
何かと故郷の事や過去を振り返る機会が増えて、その中で色々思うことがあってこういうパーソナルな詩を書き下ろしたんじゃないかなと。
個人的にはリリース当時学生だったあの頃と
大人になった今ではこの詩の自分の中での響き方はだいぶ違うし、
大人になって全て過ぎ去ってから思う感情とか思いとかが詰まっていてとても感傷的な気持ちにさせられる。
太志のポエトリーリーディングではこれが一番好き。
「12月のひまわり」
19thシングル。
Aqua Timez×岐阜市の「まだ、はじまったばかりプロジェクト」のプロジェクトソングとして制作された。のちに「情報ライブ ミヤネ屋」エンディングテーマとしても起用された。
タイトルの「12月のひまわり」を聞くと
個人的にはMr.Childrenの「CROSS ROAD」の一節を思い出すが、
太志曰く「8月に咲かせられなかった花、自分で言えば18歳の時に咲かせられなかった花があって、遅れてしまったけれど、それを今こそ咲かせたい」という思いでつけたタイトルのようだ
「Aqua Timezの真骨頂でもあるミディアムバラード」と公式文にもあるけど、まさに彼らの良さがぎゅっと詰められたような名曲。まさかこのタイミングでこんな良い曲が来るとはリリース当時は思わなかった…。
「アスナロウ」がイメージを打ち破る曲だとすると、こちらは全盛期のイメージ通りの彼の良さを最大限に拡張した感じ。らしい、王道っていう言葉がとても似あう。
一方で、
初期の「向日葵」や「小さな掌」のような歌詞の暖かさと
「エルフの涙」以降に獲得した歌詞&メロディ重視なサウンドメイキングとアレンジとがとても良いバランスで両立しており、まさに今と過去のAqua Timezの良いところを合体させた、ある意味集大成みたいな曲になってると思う。
ノスタルジックな歌詞でただ過去を振り返って懐かしむのではなく、前を向く力をくれるのが太志の歌詞の良さだよなと思うし、
この曲はホントはどこを切り取っても良いところしかない。
これより思い入れのある曲、好きな曲は何曲かあるけど、最高傑作が一番相応しい楽曲だと思う。
惜しむべきはライブでは1回しか聞けなかったことか…(ライブでは「アスナロウ」ツアーではやったけど、次のツアーとラストライブではハブられた…)。
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Music Videoが存在している。
全てコラボ先の岐阜市でロケが行われている。学校、校庭、公園、河川敷等々…小学校時代を彷彿とさせるようなノスタルジックな風景が映し出される。曲とのマッチは凄く良い。
歌詞のテーマが過去を振り返る内容で、また2番サビにインディーデビューアルバムの「空いっぱいに奏でる祈り」の名称が出てきたり、Music Videoに過去の映像が散りばめられていたり、少なからず今までの道のりを意識するような要素が出てきているんだけど、これが最後のシングルになるというのはなんかドラマチックでもある。
解散話がどの時点で出てかは不明だし、あくまで結果論ではあるけども。
「ソリに乗って」
日本テレビ系『PON!』12月度エンディングテーマ。
彼らには珍しいクリスマスソング。前に「プレゼント」という曲もあったけど、こちらはもっと明確にクリスマスソング!な歌詞をしてる。
それもそのはず、この曲は賛美歌としても有名なクリスマスソング「もろびとこぞりて」をフューチャーしているんだから。なんか初めて聞いた時にデジャヴを感じたのも元ネタが超有名曲だったからなんすよねぇ。
それをアイリッシュ風味のポップパンクに仕上げるなんて良いセンスしてる。
Extra
今回は「10th Anniversary Best 」にのみ収録された楽曲を取り上げる。
「さくら道」
3カ月連続配信限定シングルの第1弾。
日本テレビ系『PON!』4月度エンディングテーマ。
跳ねるようなリズムとポップなメロディが心地よい春にピッタリな1曲。
踊るようなピアノの演奏が曲に軽やかさと華やかさを加えてて、聞いてるだけで凄くハッピーな気持ちにさせてくれる。
歌詞に暗かったり、内省的な一面だったりするというのがこの曲は皆無。とにかくハッピー。とにかく恋愛の一番楽しい時期の感情を詰め込んだみたいなそんな多幸感満載ソングだ。
良い曲だけど、明るすぎて気分が落ち込んでるときは真正面から向き合えないタイプの曲かもしれない…笑
余談だけど、「この前向きさに君を巻き込む」という1フレーズは「エルフの涙」のキャッチコピーからの引用?で曲のモードとしても「エルフの涙」期に近い。
「ねがお」
3カ月連続配信限定シングルの第2弾。
「エルフの涙」期のようなほんわかしたポップス路線の楽曲。ホーンセクションの味付けが良い。
医療従事者に向けた凄く限定的な歌詞の一節があるんだけど、これも「風に吹かれて」みたいな制作エピソードがあるのだろうか。情報求む。
でもこういう「ありのままで君が良い」的な歌詞はありきたりだけど、ストレートに励まされるよな。
「シンガロング」
3カ月連続配信限定シングルの第3弾。
前2曲とは打って変わってバンドサウンドを押し出した爽やかなロックチューン。
「シンガロング」ってタイトルつけてるけど、そういったパートは曲中には無く、
大声で歌う、というよりかは一緒に口ずさむ、的なニュアンスなのかなと。Aqua Timezの音楽性的にもそちらの方が似合ってる感じはする。
弱さを曝け出して一緒にしゃがみ込んでくれるような暖かさ、これが太志の歌詞の真骨頂だと思うんだけど、この曲はその良さがぎゅっと詰まっている。
この3カ月連続配信限定シングルの中では1番好き。
「濃霧のち」
ベストアルバム「10th Anniversary Best BLUE」に収録された新曲。
「最後まで」のようにMusic Videoが制作されたり、タイアップが付いたり、次のオリジナルアルバムに収録された訳では無いのでどうにも影が薄い1曲。
ゲームの世界に入りこんだような世界観の歌詞と
コーラスワークを駆使した幻想的な雰囲気が特徴的。
特にアニヴァーサリーを意識した曲というわけでも無く、配信限定で出たシングルの方がキャッチーでメロディが強いわけでも無い。
サウンド的にも後にも先にもこんなテイストはこれ1曲だけなのでなんか独特の立ち位置にいる曲だなぁと思う。