Quantum of Solace

好きなことを書きたいときに

Aqua Timez『空いっぱいに奏でる祈り』 #1

 

 

空いっぱいに奏でる祈り

Aqua Timez 1st mini album。

2005年8月24日リリース。

 

唯一でのインディーズでのリリース。オリコン初登場時はランクインしなかったが、半年ほどかけてじわじわ売り上げを上げていき、チャート1位を記録した。

70万枚に迫る売り上げを記録し、これはバンドとして最高の売り上げとなった。

なお今作のみインディーズだからなのかサブスクリプション等での配信がされていない(ベストアルバムに収録された曲は除く)

 

 

 

 

彼らの事を知ったのは2006年の「決意の朝に」でなので

勿論発売当時は彼らの事は知らず、このアルバムは後追いで聞いた。

2007年くらいに初めて聞いたけど、当時リリースされてた彼らのアルバムの中では最後に手に取ったと記憶してる。

メジャーデビュー後のイメージと比較して聞くと、メロディ的なキャッチーさは通じるものがあるけど、サウンドも歌も粗削りでまだまだ原石なイメージ。

それでも既に「等身大のラブソング」はヒットチャートにおけるポップソングとしてキチンと完成しているし、それ以外もこの時期のミクスチャーロック路線にしかない粗削りながらも感じるカッコよさは確実にある。

いうならばAqua Timez黎明期。

 

 

「希望の咲く丘から」

闇の中から光を見出す初期アクアのど真ん中ともいえる曲。

初期の中でもこの曲は特にネグレクトや虐待を彷彿とさせ、特に歌詞が暗い。ここまでダークな世界観なのはこの先も出てこないので実は唯一といってもいいくらいで珍しい。

楽曲としてはラップ風に歌詞を載せる平メロとキャッチーなサビメロという構成のミクスチャーロックがこの時点で完成されてる。

 

太志曰く「この曲を世の中に飛ばしていく(ヒットさせよう)」という気持ちがあったようだけど、結局ヒットしたのは曲の方向性が真逆の「等身大のラブソング」。

もし仮に「希望の咲く丘から」がヒットしていたら、もっと社会的な歌詞を書くゴリゴリのミクスチャー路線を取っていたかもしれないので、彼らの最初の分岐点はここだったのかもしれない…なんて今だからこそ思ったりする。

 

マチュア時代の自主制作アルバム「悲しみの果てに灯る光」にも収録されていた。

 

 


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Music Videoが存在している。ニット帽にダボっとした服を着た太志のファッションは今から見ると00年代前半の空気感を強く感じる。

太志がやたらギラギラしてるけど、他のメンバーが良くも悪くもパッとしない普通の感じなので、カッコよく成り切れない背伸びした雰囲気が彼ららしいかなと。

 

 

 

「向日葵」

前述した”ラップ風に歌詞を載せる平メロとキャッチーなサビメロ”型の曲。

闇の中から光を見出す系の歌詞は太志の真骨頂だと思うんだけど、「希望の咲く丘から」に比べるとメッセージが明るく、言葉も力強い。


この曲の特徴としては

平メロがとても長く、ラップ風の歌詞が結構淡々と続いてサビがなかなか来ない…というもの。

こんな具合に言いたいこと、伝えたいことがいっぱいあってそれを歌詞にギッチリ詰め込む、というのは初期のアクアならではの歌詞構成でファンからするとそれもまたご愛敬って感じ。

 

あと各楽器隊が自己主張することがあまりないバンドなので、この曲のラストにあるスケール感のあるギターソロはなかなか珍しい。良い意味でらしくないカッコよさ。

 

ちなみに

この曲は自主制作アルバム「悲しみの果てに灯る光」に収録されたver.(「光の射すほうへ」以降の歌詞が無い)

「空いっぱいに奏でる祈り」に収録されたver.と

メロが一部改訂され「The Best of Aqua Timez」で再録されたver.の3つの録音が存在する。

「The Best of Aqua Timez」での再録ver.は楽曲自体に大きな変化は無いが、音がスタイリッシュになり、太志のヴォーカルもスッキリした歌い方に変わったのでだいぶ印象が異なる。これもこれで良い。

 

 

 

「等身大のラブソング」

有線やFMで大量OAされて、アルバムのヒットを牽引した楽曲。

Youtubeに投稿されている公式MVは3000万回以上の再生回数を記録しており、ライブではキャリアと通してほぼ欠かさず披露され続けた自他ともに認める代表曲の1つ。

 

楽曲としては

レゲエのリズムに乗せて「俺についてこい(意訳)」的な愛の言葉を歌うラブソング。

軽やかなノリとキャッチーなメロディが光る1曲で、ミクスチャーロック的な曲が多い今作の中でも、この曲だけはメジャーデビュー後の彼らのポップさに通じるものを感じられる。

一方でこんなオラオラしたノリの歌詞もレゲエのノリも後にも先にもコレだけなので、彼らが解散した今振り返っても超異色な曲でそんな曲が代表曲になってしまっていた…というのは面白い。

 

また他のアルバム収録曲と比較して、

悲しみとかそういった要素が無い幸せな雰囲気に包まれてる歌詞が良いと思うし、ティーン向けラブソングと思いきや歌詞もよく見れば普遍的なこと歌ってるし、伝わるものもある。ちょっとクサイ歌詞も多いけど、それを「等身大」といってしまう感じが可愛い。絶対等身大じゃないだろ!背伸びしてんだろ的な。

太志自身も「こうあれたらいいのにな」という理想像みたいなのを歌ってるみたいばことを雑誌かなんかのインタビューで言ってたし。

そういった所も含めて"らしくない"のがある意味らしいなと思う。

ゆえに何曲か存在する女子目線の改作カバーなんかは個人的には表面の薄っぺらい所しか掬ってないようにしか聞こえないんだよなぁ…(ファンの戯言)。

 

 

「希望の咲く丘から」ではなく「等身大のラブソング」を推してヒットさせようとした会社の人はホント見る目があるなぁと思うし、この曲が跳ねたおかげで実際太志のポップセンスが陽の目を見ることになったわけだし、結果としては色々良かったんじゃないかなと思う。

 

この曲は自主制作シングル「いつもいっしょ」にボーナストラックとして収録されており、おそらくその音源が「10th Anniversary Best RED」のファンクラブ限定盤に収録されている。そちらの音源は歌詞が異なっている。

 

 

路上ライブの模様を映したMusic Videoが存在しており、前述の通り3000万再生以上記録している。これはAqua TimezのMusic Videoの再生数で一番多い記録である。

「10th Anniversary Best RED」のファンクラブ限定盤には2014年のツアーでの映像を使い、ファンが参加したMusic Videoが6種収録されている。


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「独り言」

ほぼ全編ヴォーカルが加工されており、ドラムンベース風のリズムなども相まってデジタルロック的な趣の強い1曲。

宇宙やビックバンといったスケールの大きいワードからそれと対比して刹那的な人の命を描いた死生観を感じる歌詞で、割と珍しいテーマで書かれてる曲だなと感じる。

マチュア時代の自主制作アルバム「悲しみの果てに灯る光」にも収録されていた。

 

 

「上昇気流」

爽やかなメロディーラインとゴリゴリのミクスチャーロックが融合した1曲。

この手の曲をAqua Timezはよく作っていて、だいたい2009年の3rdアルバム「うたい去りし花」辺りくらいまで定期的にリリースされていた。その第一弾って感じ。

孤独とそこから前を向く前向きさを描いた歌詞も含めて、個人的に凄くAqua Timezらしさを感じる1曲でこのアルバムの中でも特に好きな1曲。

 

個人的な思い出話だけど、初めて行った2008年のライブ「evergreen tour」でこの曲を歌ってくれて凄く感激したんだけど、一方で太志がめっちゃメロディを崩して歌うのでショックも受けたという思い出深い曲でもある。

それ以降ライブで聞くことは無かったんだけど

そんな曲がまさかなんとファイナルライブのオープニングを飾る曲になるとは…。

そこまでライブ常連曲でも無かったのでビックリしてライブの時、この曲のイントロが掛かった時思わず声を上げたのは一瞬で子供の頃の気持ちに戻ったのは良い思い出。

 

 

「一生青春」

アイシン精機のCMソング。

「上昇気流」に引き続いて爽やか×ミクスチャーロックな楽曲。青春って付いてるくらいなので爽やか度合いはこちらの方が上かな?

大人になって失くしてしまった気持ちや冒険心、そこから一歩踏み出す様を歌っていて
改めて聞いてみるとこういう一歩踏み出す系の歌詞が初期には多いな~と思う。

2014年のツアーで久々に披露された際はスカっぽいアレンジに変更され、より爽やかに、より賑やかになっており、青春感が強まってて凄く良かった。

 

マチュア時代から存在していた楽曲でライブ映像を使ったMusic Videも存在しているが、一度も商品化されておらず現在Youtubeの公式アカウントからも投稿されていない。そんなこんなで幻のMVと化してる。

 

 

 

 

「始まりの部屋」

マチュア時代の自主制作盤に収録されていた楽曲が今作には多く収録されているが、その楽曲たちと比べても楽曲制作時期が古いという曲。

結成間もない時期に作られたということなので、この時点でAqua Timezらしさはそこまで確立してなかったのかなと思う。

跳ねたグルーヴが印象に残るし、メロディよりもカッコよさ、勢いを重視したような感じでこの感じはこの曲でしか聞けないのである意味レアかも。

 

 

「Blues on the run」

ポエトリーリーディング
歌詞カードの中にではなく、手書きの歌詞がCDケースの下の紙の部分に書いてる仕様になっている。

キーボードの弾き語りだけをバックに太志が滔々と語る内容だが、どうやらmayukoが持ってきたデモから作られた曲だ。
自分がありのままでいるために、について綴られている。最後の方に「親父、お袋、姉貴、俺」とあるように太志自身の内面を吐露したような内容で凄くパーソナルな詞だと思う。この詞の内容は次の曲「青い空」にもそのまま繋がっている。

 

 

「青い空」

切ないギターのアルペジオが印象的なアルバムの最後を飾るバラード。
太志とOKPがバンドを結成するきっかけになった曲で、現ドラマー TASSHIがこの曲を聞いて泣いたなんて逸話もあるバンドとしても重要な楽曲。

 

「内に強く意思を持ちなさい 目に見えぬ大きさを持ちなさい…」のくだりは太志の父の言葉(詩集より)のようで、「Blues on the run」に引き続きパーソナルな側面が見える。

そういったパーソナルな事を置いたことで、この曲で歌われる"生きていくことへの強い決意"みたいな個人に焦点においた歌詞は凄く強烈に響くし、メッセージとしてもダイレクトに伝わるんじゃないかなと思う。

メロディはそこまでキャッチーでは無いけど、前述の歌詞のメッセージ性にノスタルジックなサウンドアレンジ、最後を飾る雄大なギターソロ…と初期Aqua Timezの良さはこの曲にがっちり詰まってる気がする。

 

「The Best of Aqua Timez」で再録されているが断然こちらの音源の方が良い。