Quantum of Solace

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Aqua Timez 「ダレカの地上絵」Part1 #5

 

ダレカの地上絵

Aqua Timez 2nd Album。

2007年11月21日リリース。

 

前作から約1年ぶりとなるアルバム。タイトルは「ナスカの地上絵」からのもじり。

シングル「しおり」「ALONES」「小さな掌」を収録。

オリコンチャートでは自己最高の2位を記録。しかし売り上げは10万枚と前作より低下。

同時期に活躍していたいきものがかりスキマスイッチとシングルCDの売り上げは大差ないが、アルバムではだいぶ差をつけられてるなぁと今更ながら感じる。

 

 

今作からリアルタイムでCDを手に取り始めた。

人生初ライブに行ったのも今作を引っ提げてのツアー「evergreen tour」だったし、その参加したライブは太志の誕生日に近かったこともあって、サプライズで誕生日祝いのコーナーみたいなのがあったりして…他にも色々あるけど、子供の頃の思い出が一番詰まったアルバムだと思う。

アルバムとしては「風をあつめて」よりもディープな世界観が出ていて、ロックバンドとあろうとする自意識を前作以上に強く感じる作品。本人たちもやりたいことを詰め込んだ作品と自認している。

そういった志向は今作で一応の決着を見せるので、ロックバンドであろうとしたAqua Timezの最後のアルバムともいえるかも。

 

 

「一瞬の塵」

印象的なアコギのイントロから1分かけて徐々に幕を開けていく…まさしくアルバムのオープニングを飾るに相応しい楽曲。

叩きつけるようなラップをスリリングなサウンドでクールに彩っていて、彼らのキャリアの中でも唯一無二のカッコよさを誇る楽曲。アレンジもテンコ盛りでややカオス気味なのも良い。

一方、ギターもゴリゴリでベースもファンキーだし、割とロックなサイドの楽曲ではあると思うんだけど、

激しさ一辺倒じゃなくてゴリゴリの演奏の中にも冷静さを感じられて、幾分かスタイリッシュな耳ざわりに仕上がっていたりする。そういった部分で昔のミクスチャーロック路線の楽曲との違いが明確に感じるし、

ストリングスのアレンジが楽曲に新しい色を添えていて良い仕事してると思う。

 

この曲に関しては「シングルでは絶対やれない事を!」ということで作られたみたいだけど、確かにシングルじゃできないよなこのカオスさは。今作は最もディープな世界観だと言われる一因はこの曲だと思う(笑)

 

2012年のシングル「つぼみ」にこの曲のリミックスが入っているが、

「ALONES」のシングルに入ってた「Mr.ロードランナー」のリミックスとは異なり、

こちらはほぼ原形の無いリミックスでノイズみたいなサウンドをバックに加工されまくった太志のラップが小さな音量で載るという…

個人的にAqua Timezの中で今でも良さが分からない唯一の曲。

 

 

「世界で一番小さな海よ」

透明感のあるピアノが印象的なミディアムバラード。

この曲に関して太志は「孤独は一人で部屋にいる時より、賑わっている輪に自分が入れない時により強く感じるもの」といった趣旨のエピソードを披露しているけど、

誰にも不安や自分のことを打ち明けられずに、ドンドン壁を作って自分の中にいろんなものを溜め込んでいって…そんな辛い時期は自分にも覚えがある。伝わらないから諦めちゃうっていうのがもう・・・。

歌詞がラストに救いがあるかと言えばそうでもなく、どんどん内に籠って行ってしまう感じがあって鬱屈するんだけど、だからこそ、同じような境遇の人はこの曲救われるっていう部分はあるんじゃないかなと思う。少なくとも自分はそうだった。

 

 

 

 

「しおり」

3rdシングル。

三ツ矢サイダー」のCMソング、リリース後にはスペシャルドラマ「新幹線ガール」の主題歌として起用された。

歌詞が「今日もあなたが好きでした」で終わる爽やかなラブソング。

シュワっと弾ける炭酸みたいに甘酸っぱい恋模様が描かれた歌詞は

新垣結衣が出演してた三ツ矢サイダーのCMに非常にマッチしていて、今見てもタイアップ職人だなぁ…と感じる1曲。サビ終わりには「三ツ矢サイダー♪」を歌い足したくなるのは俺だけじゃないはず。

この曲の歌詞を引用してラジオ番組「SCHOOL OF LOCK」の学校掲示板のポエム部?に書き込みしてた痛い黒歴史があったりするくらいには自分の青春の1ページを飾っていたりする。

 

 

メジャーデビューして割とガッチリアレンジしてた前2作シングルと比べて、この曲はバンドサウンドを中心にシンプルにサウンドが構成していて、ロックバンド感が適度に出てて良い。

前2作のシングル、そして次の「ALONES」がライブ常連であるのに対して、

この曲はライブではなかなかやらないレア曲。キャリア後期にライブでやった時もキーを半分下げていたりしたので、太志が歌唱方法を変えてから当時のまま歌えないというのがライブであんまりやらなかった理由だったのかも。

 

 

しおり

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Music Videoが存在している。

曲調に合わせたような青空の下、屋外での演奏シーンがとても爽やかに仕上がっていてシンプルながら良い。

なおこの時、太志が坊主になっており、帽子もニット帽ではなくキャップを被っている。珍しい。

 

 

 

「小さな掌」

5thシングル。テレビドラマ「ジョシデカ!-女性刑事-」の主題歌として起用。これが初のドラマタイアップとなった。

「ダレカの地上絵」の1か月前のアルバム先行シングルともなっている。

 

普段は近すぎて言い出しづらい相手へ「ありがとう」を素直に伝えるための歌。

太志が2007年の「the "BiG BaNG" tour '」最中に喉を傷め、ツアーを中断することになった際に待っていてくれたファンや周りの人への感謝を綴った歌詞とも言われる。

 

日常生活を普通に送っていれば「ありがとう」なんて死ぬほど言うし、大して珍しい言葉でも無いんだけど、

自分の近くにいる大事な人へはついつい忘れてしまいがちになる”ありがとう”。

基本的にこの曲は感謝の歌だけど、感謝の大切さを説いている…というよりかはそれを伝えらなかった後悔が歌詞の半分くらいを占めてて、

「大切な人の大切を見過ごしていく…」って本当にその通りだなぁと思うし、だからこそ口に出して伝えたいよねって思う。

楽曲としてはロックバラードという形のこの曲。「千の夜をこえて」とは違い、もう少しバンドサウンドをメインに置きつつも音数を絞って、ストリングスアレンジで曲に鮮やかな色を付けるアレンジが素晴らしい。歌詞と相まって凄くドラマチック。

 

小さな掌

小さな掌

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バンド演奏とドラマパートで構成されてる点では「千の夜をこえて」とも似てるし、モノクロ基調のバンド演奏パートはだいぶ系統としては似てる。

ドラマパートもストーリーは合ってないようなものだけど、微笑ましい惚気みたいなのをずっとやってるけど、割と歌詞を抽象的に捉えた演出になってて、結構ハマってる。

 

 

「B with U

「等身大のラブソング」を彷彿とさせるレゲエのリズムに乗っかるラブソング。

等身大~の「俺についてこい!」的なノリじゃない、もっとずっと可愛らしい恋愛の煌めきを切り取った歌詞が印象的。歌詞の女性は太志の理想像から来てるらしい。

実はストレートなラブソングがそんなに多くないAqua Timezだけど、数少ないラブソングの中でもこんなにフワフワした甘いお菓子みたいな曲はこれだけ。気持ち、メロディも声も甘いです。

アルバムの中でも好きな曲だけど、もう30代が近くなってきてる自分にはちょっと胃もたれしそう(笑)

 


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全編ドラマ仕立てでAqua Timezが登場しない初めてのMVとなった。

ドラマには田島亮、そしてブレイク直前の佐々木希が出演している。

主人公がニット帽被ってるのはやっぱり曲の歌詞が太志の理想の女性像を描いてるからかな?

彼女は栗色の柔らかい癖ッ毛では無いけど、佐々木希の顔面偏差値の前では全然許される。

 

 

 

「ピボット」

ヘヴィなサウンドが鳴り響く中でサビが爽快に突き抜けるのが最高な1曲。

歌詞に漫画「スラムダンク」で登場する安西先生とその名言が登場するし、

他にもスポーツに通じそうな歌詞がちらほら。そしてタイトルがバスケ用語の「ピボット」。完全にバスケソングですね。

熱血とかスポーツとか、そういう雰囲気を持っているのは彼らの曲の中では結構珍しいかもしれない。この手の歌詞はぱっと思いめぐらせても「最後まで」くらいしか思いつかん。

例によってギターリフの元ネタはRage Against the Machineの「Know Your Enemy」。

 

 

「白昼夢 (Interlude)」

ゆったりとしたインストルメンタル

今作を引っ提げてのツアー以外でのライブでも転換時によく使われていた印象。

次の曲と音が繋がっている。

 

 

「秋の下で」

憂いを帯びたクールなサウンドとズドン!とインパクトのあるサビが特徴的な楽曲。

曲の構成自体はラップとキャッチーなサビという初期の彼らによくあるパターンだったんだけど、サウンドのアプローチの仕方は以前とだいぶ違う。

バンド感は強い曲だけど、音自体はそこまで多くなくて、少ない音でどうやって歌詞の世界観を再現するか趣向を凝らしている印象がある。

「青い空」が曲調として近いので、比べて聞いてみるとバンドとしての進化を感じられると思う。

 

一時期Youtubeで「秋の下で」の別ver.が上がっていた。音色はインディーズっぽかったが、自主制作されたCDにはこの曲は収録されておらず、詳細は不明。

 

 

 

 

Extra

「しおり」 C/W 「夢風船」

NHK BSハイビジョン『地球に暮らす子供達』のテーマソング。

ゆったりとしたビートにラップっぽく淡々とメロディを載せていく曲で、これぞ!という明確なサビが無いのも特徴。

個人的にはシンセのフワフワしたサウンドが曲に黄昏感を演出しているような感じがして表題曲の「しおり」と共に夕暮れを思わせるシングルにまとまっているのが良かった。

元々はインディーズ時代に存在していた楽曲のようだ。

 

アルバム「ダレカの地上絵」ではラストのボーナストラックとしてyurikago ver.が収録されており、そちらではテンポアップしたワルツ調の楽曲に生まれ変わっている。

 

しおり

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「ALONES」C/W 「暁」

Aqua Timezには珍しくジャージーサウンドとファンキーなノリの楽曲。

「ALONES」にもラテンっぽい要素が入ってたけど、このシングルはそういうモードだったのかな。

最初聞いた時は「なんだこのカッコいい曲は!」って思って、なんなら「ALONES」より聞いてた気がする。

後にも先にもこういう路線はこれだけだったのが残念。

ALONES

ALONES

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