Aqua Timez 8th Album。
2018年4月25日リリース。
前作から今作に至るまでシングルがリリースされていないので、シングルが収録されない初めてのアルバムとなった。
今作を引っ提げてのツアーの前の5月8日に年内での解散を発表、今作が事実上のラストアルバムとなった。
前作「アスナロウ」の時点で編曲の名義もバンド単体に戻りつつあったが、今作は全曲が再び編曲がバンド名義に。一部客演を除き、バンドのみで作り上げたアルバムとなった。今までにない方向性に足を踏み出したりしていて、バンドとしての力が目に見てパワーアップしているのを感じられるので、これで最後というのはとても残念だった。
解散に際して「全てを出しきったような、燃え尽きたような感覚」というコメントが出ていたが、聞いてる側からするいやいや、これからでしょ!という気持ちがすごーーーく強い。
「たかが100年の」
PlayStation 4用ゲーム『グランクレスト戦記』主題歌。
アルバムのオープニングを飾る疾走感溢れるロックチューン。
ここ数作はすっかりご無沙汰してたガチャガチャしたミクスチャー系のロックで2006~9年とかあの辺のAqua Timezを思い出した。サビ前の英語詞が入る辺りなんかもあの頃っぽい。
ラストライブでは最終盤(最後から数えて4曲目)に披露され、その際「最後のアルバムで伝えたかった事はこの曲に詰まっている」と語っている。
最後のアルバムというか、ここ数作のアルバムで太志が伝えたかったメッセージは「顔を上げてみると思っていたよりも世界は素晴らしいものだよ(意訳)」的な物が多くて、それを改めてこの曲で伝えたかったのかなぁと思いました。
個人的には同じようなタイプの「シンガロング」の方が好きなのでこの曲が特に!ということは無いんだけど、結構ロックバンド感が強いサウンドアレンジは好き。
「えにし feat. GOMESS」
ラッパーのGOMESSを迎えたラップロック。
ギターのチョッパーとベースのスラップのファンキーなロックサウンドに乗せて、
鋭いラップを載せていく様が物凄くクール。これだけでもかなり良いのに自分より年下のラッパーであるGOMESSを迎えることでバチバチにラップバトルで語り合ってるような音像が生まれていて、結果、曲に良い緊張感が出ていて凄く良い。
正直、ここ数作の路線からこういうのをAqua Timezに求めては無かったし、想像すらしなかったけど、久しくAqua Timezに感じていなかったカッコよさをこの曲でガツンと提示されて度肝抜かれた。
「遊びつかれて」
ザーザーとノイズの効果音が入ったり、ラジオ越しに聞こえる曇ったような音質だったり…1分ちょっとの小曲。ラジオのスイッチを切るようにして「未来少女」にそのまま繋がる。
「未来少女」
今作のリード曲。『情報ライブ ミヤネ屋』4月~6月エンディングテーマとして起用されていた。
塞ぎ込んでいる僕に未来から来たキミから手紙が届く、というストーリー構成の歌詞は「エルフの涙」の頃っぽい作風。この曲のポップな感じ自体がそれっぽいかも。
この曲に関しては歌詞が凄く好きだ。
どういうニュアンスで書かれたものはか定かでは無いけど、個人的にはこの歌詞の主人公に自分を、手紙の主にはAqua Timezを重ねて聞いていた。
「楽しくもないことで笑い 泣けるほど悲しくも無い
だけど 独りぼっちはいやだ 僕はずるいやつだろう
大勢でははしゃくだがいい 心を近づけたりはしない」
という歌詞は傷つくのが怖くて自分から孤独を選んでいるような様は凄く自分の消極的な生き方に被ったし、そういう自分に太志の優しい歌詞が今まで響いてきたわけであって、
その自分とバンドの関係性がこの曲で可視化されたみたいでなんか勝手に感動しちゃってた。こんな消極的な感情って口に出すのも憚れる感じがあって、ずっと溜め込みがちだけど、自分だけじゃないを思えたという気持ちは前を向くには凄く必要な感情だよね。一緒にしゃがみ込んでくれるようなAqua Timezの音楽性を感じられる最後の1曲でした。
Music Videoが存在している。
アルバムのジャケットと同様に六七質がイラストを手掛けている。
静止画の中で一部がアニメーションで動く、いわゆるシネマグラフで今までに無いMusic Videoになっている。勿論本人たちは出演していない。
「日曜讃歌」
星野源の「SUN」やAKB48の「恋するフォーチュンクッキー」などを彷彿とさせる緩めなディスコチューン。
日曜讃歌なんて言うくらいなので休日の日曜のゆるい幸せを綴った歌詞で、この辺は前作収録の「サンデーパーク」と共通してる。
キーボード担当のメンバーがいるため、EDM的なノリの曲はあったけど、Aqua Timezでディスコっぽい横ノリの曲は少ないので初めて聞いた時は凄いビックリした。まだこんな可能性があったのか!?と。まぁこのアルバムで解散しちゃうんですけど…。
「ミックス茶」
ミックス茶…お茶の歌?と思いきや、ただ単にミクスチャーロック路線の楽曲っていうことで、割と初期にあったようなゴリゴリのロック路線。
なんだけど、ミクスチャーを冠してる分だけあっていつもよりも随分と音がハードな作り。なんならメタルチックですらある。ここまで振り切ったハードさはありそうでなかったのでなかなか新鮮だ。
間奏のお喋りは彼らのラジオ番組「アクアトレイン」の放送内容がそのまま引用されてる。
「陽炎-interlude-」
ライブの転換とかで使われてそうなインスト。
「+1」
Aqua Timez流のファンク。思わず踊りだしたくなるようなグルーヴィーなサウンドとメンバー全員が歌ってる楽し気なサビのノリが非常に心地よい。
確かファンクラブサイトでこの曲のダンス講座動画みたいなの出てたような…(出番は今作を引っ提げてのPresent is a Present tour 2018でしか無かったので記憶が乏しい…)。
Hey!とかFoo!といった楽し気な掛け声だったり、間奏の口ベースとファンキーなTASSHIの歌唱だったり、とにかく遊び心満載で聞いてるだけでも凄く楽しい。ライブで聞いた時も楽しかった記憶がある。
ラストライブではセトリから外されていたので、まじでPresent is a Present tourだけでの披露となったこの曲。もしこの先もバンドの活動が続いていたら確実にライブアンセムになっていただろうに…。
それにしても「さぁ君が6人目」と聞いてるリスナーをバンドの6人目のメンバーだという歌詞があるんだけど、まさかそう歌ってるくれるバンド側がいなくなってしまうとは(笑)
「愛へ」
とてもシンプルなメッセージを軽快のノリに乗せた爽やかなポップパンク。
ライブではサビの「愛へ」の部分を太志が観客に振って、ライブで観客が歌うパートがあったりして「+1」に続いてライブでの一体感をより強く感じられる曲となっている。
「愛」についてなので歌詞ももっと深そうなメッセージかと思いきや、めっちゃド直球な愛へのメッセージでちょっと笑ってしまった。「愛へ」なんてタイトルつけるからバラードだろうなぁって思ってたし。タイトルと曲と歌詞にギャップがあった部門だと1位。
にしてもこれ、最後の歌詞が意味深だ。
終始、前向きな感じで「愛へ」と歌っているのに
最後は「根拠もなく 大丈夫だと言っておくれ 次に会えた時もまた」。
最初聞いた時はそこまで気にならなかったけど、「last dance」があんな歌詞になってたから「ん?」となってしまった。なんだよ次に会えた時もまたってよ。
「タイムマシン」
Bメロをしっとり歌い上げるのに、サビで「hello hello」をフレーズがフューチャーされて、そこまでガッツリメロディを歌わないという構成が珍しい、というバラード。
いわゆる王道から外す感じの作りだけど、こういう奇をてらう感じはAqua Timezには珍しいよなと思う。
普通に聞けば愛のバラードだけど、「未来は見たくない」とか「思い出で巡り逢い続ける」とかバンドの終わりを意識してるんじゃない?という感じにも取れる歌詞がちょこちょこ出てくる。曲名も「タイムマシン」だし。
あぁもう全ての歌詞が意味深に聞こえてしまう病気。こういう聞き方は良くないよな…。
「last dance」
アルバム、そしてAqua Timezの最後を飾るクロージングナンバー。
ラストライブのタイトルにもこの曲名が使用されている。
Aqua Timezのアルバムのラストと言えばバラードだったのに、その通例を壊して疾走感のあるロック。
この時点では「おっ?今までとは違う趣向だな」と思ってたんだけど、
ここ数作のファンタジックな路線を暗に批判するような1番のAメロの歌詞で異変を感じて(こんな風に後ろ向きな否定っぽい詞は今まで無かった)、
さらに聞き進めていくと決まってしまった別れに再会を祈るような歌詞が続いていく…。おいおい、なんでそんなシンミリさせるんだよ。
あまりに意味深で不穏な歌詞にこんな事を当時呟いてた。
lastdanceの歌詞が意味深すぎて
— Shower@ (@redhotshow913) April 30, 2018
Aqua Timez解散説とかマジやめてくれよ
このツイートの数日後に本当に解散発表があったわけで。。。
そう思って聞いた見るとそりゃそうだよねとなる。曲名がラストダンスだもん。
曲自体は不穏な歌詞を除けば、爽やかでありつつも結構ガッツリロックしてるタイプの曲で凄くカッコイイ。いいんだけど、らしくないんだよな。
Aqua Timezはもっと前向きで明るいモノが似合ってるし、こんな切実な歌詞を聞かされて彼ららしい最後だとは思えなかった…。良い曲なんだよ、なんだけどさぁ…凄く複雑な感情が入り乱れる曲でもある。
だからこそ、ラストライブで最後を飾るのがこの曲じゃなくて「虹」で本当に良かった。