新作に向けてのJourneyアルバム振り返り記事4こめです。
全盛期のメンバーが再集結したTrial By Fireからペリーの後任としてJourneyを支えたスティーヴ・オウジェリ―期の最終作Generationsまでを振り返っていきます。
Journey『Trial By Fire』
1996年10月22日リリース。
・ロス・ヴァロリー (bass)
・スティーヴ・スミス (drums)
・スティーヴ・ペリー (vocal)
・ジョナサン・ケイン(keyboard)
10thアルバム。
前作「Raised On Radio」を引っ提げてのツアーが途中で中断され、Journeyとしての活動もそのまま休止状態に入ることになり、
メンバーを各々ソロ活動に取り組むことになった。
(ペリーは2枚目のソロアルバムをリリース、ニールとジョナサンはThe Babysのメンバーを合流してBad Englishを結成、ヴァロリーとスミスはバンドを先に抜けたグレッグ・ローリーと合流してThe Stormを結成などなど…)
1988年にはベストアルバム「Greatest Hits」がリリースされ、現在までに全世界で2000万枚の売り上げを記録する大ヒットを飛ばしていたが、
メンバーが再結集したのは「Raised On Radio」から約10年後の1996年になってからだった。
「Escape」期のメンバーが揃い、まさに全盛期の再現とも言うべきアルバムがこの「Trial By Fire」。本編14曲70分越えという超大作でその力の入れようがヒシヒシと伝わる。
今作は全米3位という結果も残したが、ペリーの怪我とツアーに出たいメンバーとの確執により、「Infinity」以来、バンドを牽引してきたペリーが脱退するという事態に陥ってしまい、フロントマンを欠いたJourneyはこれ以後長い暗黒時代を迎えることになる…。
と、ざっとアルバムまでの経緯とその後を書いたが、アルバム自体は全盛期のメンバーが復活しているだけあって文句なし。
リードシングル「When You Love a Woman」が過去にないほどしっとりしたバラードだったことからも伺えるが、バンド全体としても10年分きちんと歳を重ねたような落ち着きと穏やかさを感じられる。これはこれで年相応の音楽って感じがして良いと思う。
ペリーのヴォーカルが10年前に比べても掠れて高音が出なくなってるのも、一種の味になっていてアルバムの落ち着いた雰囲気を醸し出すのに一役買ってる。特にバラード(前出の「When You Love A Woman」や「Don't Be Doen On Me Baby」)はとても良い。ペリーがこれでもかというくらいじっくり歌ってくれるので。
が、やっぱり70分越えは長い…。途中変なレゲエっぽい曲もあるし、詰め過ぎは良くない。あと加齢によって声が出なくなったペリーは高音がややキンキン響くような歌い方をしてるのでそれも気になるっちゃ気になる。
Journey『Arrival』
2000年10月15日日本先行リリース。
2001年4月2日リリース。
・ロス・ヴァロリー (bass)
・ジョナサン・ケイン(keyboard)
・ディーン・カストロノヴォ(drums)
・スティーヴ・オウジェリ―(vocal)
11thアルバム。
ペリーの怪我やそれに伴うメンバー間の不和が原因で前作「Trial By Fire」を最後にスティーヴ・ペリーが、そして同じタイミングでスティーヴ・スミスもJourneyを去ることに。
後任のヴォーカリストにはTall Stories、Tykettoの2つのバンドでデビューした経験があるスティーヴ・オウジェリ―が、
ドラムスはニールとジョナサンがJourney休止中に結成していたBad Englishでもドラマーとして参加していたディーン・カストロノヴォが加入することになり、バンドは再スタートを切ることになった。
‥‥が、スティーヴ・ペリー不在が影響したのか、インターネット普及による違法ダウンロードの影響か、全米56位というかなり残念なセールスになってしまい、その結果レコード会社との契約を打ち切られてしまうという事態に…。
なお今作は日本で先行リリース後、その評判を考慮したうえで本国では数曲差し替えを行っている。
そんなこんなで再始動したJourneyだけど、幸先の悪いスタートになってしまった「Arrival」。
実はこれ、そんなに悪い出来ではない。
ソングライターでもあったペリーが抜けた穴を外部のライターを起用することで埋めており、純粋に前作よりもメロディが良くて、なおかつメロウなバラードが揃っている。
反面、ロックな曲は少ないが、オウジェリ―の穏やかで温かいヴォーカルは実にバラード映えするので作風と声質が非常にマッチしたアルバムになっているんじゃないかなと思う。特にジョナサン必殺の泣きメロが炸裂する「With Your Love」辺りは過去作なんかに比較しても引けを取らない名バラードだと個人的には思ってる。
確かに刺激的なアルバムでは無いけど、正直曲のクオリティは前と変わってないし、こんなに売れてなかったのはさすがに不当評価だと思う。
Journey『RED 13』
2002年11月26日リリース。
・ロス・ヴァロリー (bass)
・ジョナサン・ケイン(keyboard)
・ディーン・カストロノヴォ(drums)
・スティーヴ・オウジェリ―(vocal)
Journey 1stEP。
前作「Arrival」の商業的な失敗でレコード会社との契約を打ち切られることになり、
イタリアのマイナーレーベルと契約してリリースされたのが今作。
もともとはインターネットで販売されていた自主制作盤でもあるので、正直予算は少ないんだろうなぁ…っていう感じのチープな録音でかなり微妙。
「Arrival」がメロウな路線だったこともあってか反動で作風的にはロック的なアプローチが多め。これは次回作「Generations」の伏線っぽい。
今作だけの特徴というとちょっとだけ初期のプログレ、サイケ路線を出してきてる点。
大手レーベルに所属していないのでその分やりたい音楽をそのままできた!っていう感じなのでしょうか?
ただ、シングル的な曲も無くてサブスクにも来てないので本当にファン向けの作品って感じ。
Journey『Generations』
2005年8月29日リリース。
・ロス・ヴァロリー (bass)
・ジョナサン・ケイン(keyboard)
・ディーン・カストロノヴォ(drums)
・スティーヴ・オウジェリ―(vocal)
12thアルバム。
2004年頃からメインヴォーカルのオウジェリ―だけでなく、他のメンバーもヴォーカルを採るようになる持ち回り制をライブで導入しており、
それが好評だったので、そのコンセプトのままアルバムを作ってみました!というのが今作。
過半数以上は従来通りオウジェリ―がヴォーカルを採っているが、ディーンとジョナサンが2曲、ニールとロスが1曲という構成でヴォーカルを担当している。
…だが、好評だからアルバムにもなったといったが、好評とかそういう次元の話ではなくこの頃のJourneyはそもそも注目度が地に落ちていたようで
全米170位という前作をさらに下回るセールスに終わってしまった。サブスク等でも配信されておらず、EPの「Red 13」とは異なり、正式なオリジナルアルバムなのに半ば黒歴史みたいな扱いになってしまってる不遇な1作。
が、出来が悪いのか?というとそうでもなく。
全体的にハードロック仕様に生まれ変わったサウンドがギラギラしてていて良い感じで、前作「Arrival」に欠けていたロックチューンがいっぱい聞ける。
中でもオープニングを飾った「Faith In The Heatland」はオウジェリ―の突き抜けるような高音ヴォーカルが心地よく響く名曲だ。
ヴォーカル持ち回り制は…ディーンは良い。持ち回り制無しにしてもライブで普通にヴォーカル任せられるくらいの力量はあるし、歴代Journeyヴォーカリストと同様に素敵な高音ヴォーカルを持っている。ニールとジョナサンはまぁ曲作ってる張本人だし、文句はあんまり言えない。
ロス・ヴァロリーのヴォーカルは…うん…聞かなかったことにしよう。
個人的にはヴォーカル持ち回り制は悪くは無いと思うけど、
セールスの更なる悪化を招いて、結果的にオウジェリ―のヴォーカルの凄さを十分に出来ずじまいになってしまった原因にもなっているので、勿体ないなぁっていう感じがとてもする。前任とも後任とも違う温かみのあるオウジェリーのヴォーカル好きなんだけどなぁ‥‥。
今作リリース後、2006年にオウジェリーはツアー中に喉を傷めてそのままバンドを脱退してしまうことになり、この編成での作品リリースは今作が最後になっている。