キムタクと綾瀬はるかを主演に迎え、
制作費20億越え、3時間近い上映時間と
東映70周年記念作に相応しい力の入れようになっているこの大作。
いくら人気だとは言え、以前ほどはヒットメイカーではないキムタクが
時代劇という客層が限られそうなジャンルで3時間近い大作って…なかなかチャレンジングだなぁと思って、これ見てきました。
まず、制作費20億も掛けてるだけあってかなり映像が豪華。
掛けるべきところにきちんとお金をかけてこその時代劇。
セットも全然チープじゃないし、キムタクとその配下のみならず綾瀬はるかも華麗に馬を乗って野原を駆けまわります。
チープな乗馬CGで視聴者の度肝を抜いた松潤家康とは段違い。
あとセットでは無いけど、安土城の圧倒的なスケールのCGも大スクリーンで見てこその迫力(これもうちょっと映してほしかった…)。
基本、この映画は物の作りは(史実に即してるかはともかく)金掛けて作ってて、"南蛮好きで豪華な"イメージはそれこそ天下人になった後の秀吉並みなスケールで再現。
こんな具合に一般的な信長のイメージを最大限に想起させるような堅実な作りでそこは大満足。
ストーリーに満足できなくても、作品自体がチープに感じるってことは無いですね。
あと役者。
キムタクはもう安定。突出して語ることも無いけど、キムタクのイメージを崩さないでそれを信長に落とし込むっていうのを破綻なくやり遂げてるってだけで凄いわ…ってなります。そりゃキムタクブランドってやつが出来ますわな…。
あ、ちなみに今作の信長はうつけ者→魔王となる世間一般的な教科書的なイメージ像がそのまま。学説とか反映とかは無さげ。ちょっとそのイメージが古過ぎて、令和でそれやるの?って感じでしたけど(苦笑)
綾瀬はるかもキムタク信長を御する雰囲気をしっかり出せてるし、何よりアクションシーンが思って以上にしっかりしてて良かった。
座頭市とかやってたもんな納得。
メタ的な視点で言うと
「弔い合戦じゃ!」って言ってる傍に
数年前の大河で義龍やってた伊藤英明が控えてる図はちょっと笑えた。
個人的に今作で一番ビックリしたのは大胆過ぎるエピソードと登場人物の断捨離。
今作はあくまで"信長と濃姫のラブストーリー"がメインなので
それに必要ないと思われる出来事、人物は大胆にカット。
信長の人生を語るうえで絶対外せないであろう
今川義元、足利義昭、浅井長政なんかは名前こそ出てくるが登場はしない。
そもそも大名レベルの人物は斎藤道三と徳川家康以外出てこない…
織田家以外の登場人物は徹底的に排除しまくってて、ビックリした。
それに伴って
桶狭間の戦い、稲葉山城の戦い、義昭を奉じての上洛、長篠の戦いなんかは触れる程度かカット。
浅井長政は信長の妹と結婚して裏切って、いつの間にか金箔ドクロにされてます…が名前しか出てこないので誰こいつ?扱い。
どんどんエピソードが進んでいくので「これついていけない人いるでしょ?」って感じでした。
歴史好きとしてはまず物足りないと思います。割と触れられる桶狭間も肝心の戦闘シーンは描かれないですからね。だって今川義元出てこないし。
金掛けるなら合戦シーンにも金掛けてやってくれよぉ…。
戦闘シーンらしい戦闘シーンは
本能寺の変くらい。これは面目躍如って感じの迫力で良かった。
ラストの夢を見せつつ最後に一気に現実に戻して残酷な結末を突き付ける幕引きも凄い俺好み。
なかでも一番のビックリ要素は明智光秀。
本能寺の変を起こした光秀の動機っていうのは史実上では正確の事は分かってなくて、
比叡山焼き討ちで人でなしの信長の所業にドン引きしたからとか、四国征伐の件でメンツを潰されたからとか…色々あるので
信長関係の創作の魅せどころの一つだと思うんですけど、
今作の光秀はサイコパス光秀。
比叡山焼き討ちを光秀はウキウキで取り掛かって、魔王信長に心酔するという完全にやべぇ奴。(比叡山焼き討ち自体は史実でも光秀は積極的に参加してたっぽいけど)
本能寺の変の動機は"信長が濃姫と寄り戻して角が取れてしまって人間になったから天下に相応しくない"
俺が代わりに魔王になってやるぞ!というもの。
いわゆる野望説の一種ですけど、
正直今まで見てきた光秀の動機の中で一番面白かった(笑)
このサイコパス光秀と本能寺の変のラストの展開で締めはかなり良かったです個人的に。
全体的に今作は
時代劇として見ると痛い目を見るけど
キムタク信長と綾瀬濃姫のラブストーリーとして見に行くくらいのカジュアルさなら
満足いくんじゃないかな?という感じでした。
でもこれ3時間くらいあるからカジュアルに見に行く映画でもないよなぁ・・・(笑)